作文教室🌼第15回目「臨場感でイマジネーションをかき立てる」

お時間ある時にゆっくりお読みになって課題にチャレンジしてくださいね。

今回は「臨場感でイマジネーションをかき立てる」ことにチャレンジです。

臨場感を自由自在に使いこなすことができれば、たとえばブログの記事で読者をより惹き込むことが出来るようになります。

また、臨場感を得た読者は心を動かされるので、伝えたいメッセージに共感を覚えます。ゆえに、書き手が意図した行動を読後に起こしやすくなります。商品やサービスの魅力を伝えやすくなるのです。

まず、臨場感とは?

臨場感を改めて再確認します。

りんじょうかん
【臨場感】
実際にその場にいるかのような感じ。

文章で言えば、読者に単に「文章を読んだ」だけでなく、書かれている内容を「追体験」してもらえるように書くことです。

ドラマチックな内容だけではなく(もちろんドラマチックな展開には臨場感は不可欠ですが)日常の風景、印象に残っている記憶のシーンなどでも臨場感を作り出すことが出来ます。

今回の「臨場感を書く」というテーマは、これまでの講義でお伝えしてきたことを合わせ技にしてうまく生かしていただくことで、幅広い表現で書くことができます。

臨場感の作り方

臨場感を文章の力で読者に届けるために、以下の4つのポイントを押さえましょう。

  • 構成
  • 描写
  • セリフ
  • 現在進行形

順番に説明していきますね。

構成

臨場感のある文章は、事前の企画(構成)が重要です。

構成は、よどみなく読めるよう、流れるように組み立てましょう。せっかく臨場感のある文章を書いても、話が前後したり、文脈の流れで引っかかってしまうと、そちらに気を取られて散漫になり、臨場感が薄れてしまいます。

構成はよく練って、文章の流れを組み立てましょう。

描写

描写には、これまでの講義で出てきた表現方法をフル活用してください。特に、五感、オノマトペ、比喩を意識していただくと、伝わりやすい表現が出来ます。

五感の感覚をオノマトペで表現する

風景、音、におい、味、手触りや痛み、これらをオノマトペを使って表現することで、リアリティが表現できます。
*下記の参考例文をご参照ください。

比喩を使った表現で分かりやすく伝える

適切な比喩表現を散りばめることで、状況が分かりやすくなり、読者により深く理解して読んでもらうことができます。
*下記の参考例文をご参照ください。

表現方法エトセトラ

上記以外に、体言止めも印象的な表現をするのに有効です。

【体言止めの例】

電話がずっと鳴っている。

いつまでも鳴り続ける電話。

また、細かい描写も臨場感を生みます。

【細かい描写の例】

私は電話をかけた。

私は震える指で電話をかけた。

セリフ

文中の登場人物のセリフが入ると、これも臨場感アップになります。(もちろん、セリフ無しでも臨場感は出るので、場合に応じて使用してください)

セリフを入れる時のワンポイントアドバイスですが、

【例文】母と私

母がリビングでゴロゴロしている私を見てため息をつく。
「たまに帰ってきても、本当に何も手伝わないんだね、老いた母を労わろうという気持ちはないの」
「お母さんが私の世話をすることで、この子を置いて逝けないなって思うじゃん。長生きしなきゃって思うでしょ。これはある意味、親孝行だね」
「いくつになっても口の減らない子だね」

といったように、誰のセリフかという説明「と母が言った」「と私が言った」というト書きの文は、誰が話しているか分かれば、なるべく最小限にするとスマートです。
また、「」内のセリフの最後の句読点は無しにするのが一般的です。

もしくは、2連ダッシュを使って、

【心情表現の例】

――そんなこと、できるわけないじゃない。

などと、心情を入れるのも、臨場感アップの手助けになります。

現在進行形を混ぜる

臨場感を表現する文章は、読者に追体験してほしいので、過去形「~だった」以外に、「~だ」「~と言う」「~する」などの現在進行形を組み合わせることで、過去の話でも臨場感を感じられるようにすることが出来ます。

では、課題の前に参考例文3点を記載します。今回は描写で文字数を使うので、ちょっと長めにまとめました。

参考例文

【参考例文1】事故

深夜2時。ダッシュボードの時計から目を上げるとフロントウィンドウいっぱいにトラックの荷台が迫っていた。

――あ、あ、間に合わない、ぶつかる!

ハンドルを思いっきり握りしめ、奥歯をかみしめ、ブレーキを目いっぱい踏む。耳をつんざくようにキキキーッとタイヤが路面をこする摩擦音。トラックの荷台は大アップになり、突然世界が音を消してスローモーションになった。一瞬目をつむってしまう。
次の瞬間これまでに聞いたことのない激しい打撃音と、強い衝撃が私を襲った。でもまだ車は止まらない。トラックの荷台の木箱がバラバラ崩れ、私の車にゴンゴンとぶつかり、後方に飛んでいく。2台の車が連なった状態で道路を滑る。エアバッグで視界が遮られる。

――何が、どうなったの? 事故?

ようやく車が止まり、混乱したまま事故が起きたことを認識した私は呆然とする。急速に体中の血が下がっていく。怪我は?どこも痛くない。震える指で110に電話をかけた。

その後は警察車両が何台も来て、現場はものものしい雰囲気になった。状況を聞かれている時、何かを踏んでジャリ、と音を立てた。それは砕けたサイドミラーだった。

前方のトラックのドライバーが居眠りをして急速にスピードを落としたことに気づかず起きた事故。ほんの一瞬目を離しただけなのに……。
幸い双方怪我もなく、壊れた車も保険でカバーできたからよかったものの、命を落とす大事故になってもおかしくなかった。
ほんの一瞬が命取りになる……そう痛感した出来事だった。

【参考例文2】ホテル紹介

そのホテルは「本を読むためのホテル」というコンセプトが売り物で、一度は泊まってみたいと思っていた。

1階には24時間営業のカフェと書店が入っている。書店はこだわりのセレクトで、私は心ゆくまで本を眺め、気になった本を買い、カフェでサンドイッチとコーヒーを味わう。好きな本をパラパラ眺めながらコーヒーのまろやかな香りを楽しむのは、なんと優雅なことかしら。

数冊の本を抱え、ペーパーカップに入れてもらったコーヒーを持ってエレベーターで部屋に上がる。部屋はコンパクトな設計でバスタブが無くシャワーのみ。その代わりにあるのが、読書のための大きな椅子と読書灯。

照明を落として、大人2人でも座れそうなほど広くゆったりとした、ふかふかの椅子に座る。背もたれを倒してブランケットで体を包み、ほどよくポツンと灯るライトの下で、つらつらと本を読む。

一人っきりで、本をむさぼるように飽きるまで読んで、コーヒーが欲しくなったらカフェに行って、また本を読んで……。このままとろりと眠ってもいい……。

この贅沢さは読書好きの人ならきっと共感してもらえると思う。高級ホテルのサービスにも匹敵する、極上の時間。
きっと私はこの誘惑に吸い寄せられて、また来てしまうだろう。

【参考例文3】ステージ

それは小学3年生の頃、父に連れられてきた初めてのジャズのコンサート。

「トムとジェリーとか、漫画の歌はある?」
そう聞く私に父は笑って言った。
「アハハ、ないよ。でもきっと気に入ると思うんだ」

スロープになった客席、体育館より大きなステージ。奥には大きな赤い幕。そこだけ明るい舞台には、たくさんの楽器を持った人が並んで、めいめいに楽器を吹いていた。楽器はいろんな種類があった。どの楽器も金色でライトの光を受けてチカチカきらめいている。黒い楽器を持った人もいる。

ブザーが鳴り、いよいよ演奏が始まった。静まり返った会場に突然鳴り響いた素敵な音楽に、私はただただビックリした。漫画のようにポカンと口を開けていたと思う。
生の演奏はまるで音の魔法のようだった。いつも父がかけているレコードの曲が、命を帯びたかのように迫ってくる。私はムズムズしてドキドキして聞き惚れ、曲が終わるたび父や他の人を見習って一生懸命拍手した。

最後の曲は、身体中の好奇心が湧きたつような、高揚感のあるメロディだった。身体がうずうずして自然にリズムを刻んでしまう。リズムとメロディが、ステージと客席を熱気で混ぜていくような不思議な一体感。体が火照るような感覚で、耳がじーんと熱くなる。音だけなのに胸が躍る。
「これなんて歌?」
「シング・シング・シングだよ」
演奏が終わり拍手していると、みんなが、父も立ち上がっている。拍手の渦の中で。
「どうしてみんな立ってるの?」
「すごく素敵だった、ってステージの人に伝えるためにさ」
私も飛び上がって背伸びして、惜しみない拍手を贈った。

では、今回のお題に行ってみましょう。

課題🌼「臨場感でイマジネーションをかき立てる文章を書く」

今回の講義でお伝えした内容を参考に、臨場感のある文章を書いてください。
起承転結になっていなくても、1シーンだけもかまいません。例文のように長めにしてまとめてもかまいません。

今回も、書く前の「どんなテーマで臨場感のあるシーンを書くか、表現方法をどうするか」を考えていただくのが重要ポイントのトレーニングなので、文章の内容はフリーテーマとします。
お仕事のことでも、プライベートなことでも、なんでもOKです。

細かい描写も臨場感を生むので、文字数も200字を気にしないで書いてみてください。(もちろん200字で表現できたらそれもOKです)

ではでは、投稿をお待ちしていますね。

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