今回もお時間ある時にゆっくりお読みになって課題にチャレンジしてくださいね。
今回は文章における「とんちユーモア」についてのレクチャーです。
とんちユーモアが最終章なわけ
今回、次回とお送りする最終章が、なぜ「とんちユーモア」なのか、お分かりになりますか?
最終章に持ってきたのは、「笑い」を読者に起こさせるように文章で表現することが、とても難しいことだからです。
ユーモアや笑いは時として軽く見られがちですが、読者の心をほぐしたり、クスッと笑ってもらえるようにすることは、書き手のよく練った意図やテクニックが必要になります。
例えば、人間の感情メーターをゼロにした時、それでも感じる感覚は「恐怖」「不安」です。これは本能的に感じるものだからです。
そして感情のメーターを戻していくと、今度は「うれしい」を感じるようになります。
その後さらにメーターをちょっと進めて、人はようやく「楽しい」「おもしろい」を感じることができます。
「楽しい」「おもしろい」が、それまでの感情と違うのは、「怖い」「うれしい」などが1ステップで感じることができるのに比べ、
「おもしろい」は、いったん取り入れてから頭の中で理解して咀嚼して、そしてようやく「おもしろい」と感じるからです。
読者の理解が必要になってくるのです。
読み手には易しく、書き手には難しい……
そんなことも踏まえつつ、せっかく今回は楽しい話題を書くので、気軽な気持ちで以下を読み進んでください。
とんちやユーモアには何が必要か
改めて、とんちとユーモアを紐解いてみますね。
●とんち……
機に応じて即座に(=頓)働く知恵。機知。●ユーモア……
人を和ませるような「おかしみ」のこと、上品なしゃれ。
今回次回のテーマで取り上げたいのは、「知恵や知識で人を和ませる」笑いのことです。読者の想像力や感覚、知識があって理解されるものです。
それは、文章全体で表現してもかまいませんし、1文だけクスッと笑える表現が入っていてもかまいません。大笑いでもいいし、気が利いている、と読者にニヤリと思わせるものでも、どちらもユーモアです。
ユーモアを書くには、これまでに何度もお伝えしてきた「読者視点」を意識して「楽しませる気持ち」が重要です。
「読者を楽しませようという気持ち」を忘れずにいきましょう。
とんちユーモアのパターン
文章におけるとんちユーモアのパターンは、ざっくり分けると2種類です。
- 話がおもしろい
- 文章(思考)がおもしろい
今回は、「話が面白い」のほうにチャレンジして頂きますので、以下にその手法を書いて行きますね。
※「文章(思考)がおもしろい」は次回レクチャーします。
とんちユーモアを作る視点
とんちユーモアを書くために、こんな視点があると書きやすい、という項目を紹介しますね。
・意外性、ギャップ
意外性は書き方次第でユーモアになります。意外だと思うことは日常の中にたくさんあります。そのシーンを切り取るのもおもしろい視点になると思います。
【例文】
通勤途中、路肩のコインパーキングにクールなアメリカンの大型バイクが停まっていた。
「うわ、こんなのに乗ってみてー、でも俺ももう30過ぎだしな……」
すると、路面のブティックから出てきた背筋のしゃんと伸びた60代くらいのマダムが、さっそうとバイクにまたがると爆音を響かせ走り去っていった。
「お、俺、まだ30代…、がんばろ」
・間……緊張と緩和
ユーモアには、間が必要です。同じような調子でたんたんと進む場合には、ぎゅっと緊張させて、オチで緩和させる、など、文章中の間が肝になります。
【例文】
引っ越したばかりの真夜中のこと。
コンコン、コンコン、と誰かが窓をノックしている。誰!?と思ったけどここは4階。ここまで登ってきたの? それとも幽霊……コンコン、コンコン……
ノックは朝まで続き、確認するのも怖くて一睡も出来なかった。
翌朝、ようやく窓を開けた私が見たものは、物干しざおに下がったままのハンガーだった。風にゆれて窓に当たっていたのだ。
ハンガーごときにしてやられた。まったくもう。
・倒置法
文節の順番をひっくり返す手法です。ひっくりかえすだけで、意外なおもしろさが出る場合があります。
【例文】
ついに私は、成し遂げた! 1週間の甘いもの断ちに!
↓
これを倒置法から戻すと、普通の文章になります。上のほうがオーバーでおかしさが出ますね。
↓
ついに私は1週間の甘いもの断ちを成し遂げた。
・自虐を自分でちゃかす
自虐をそのまま書いても、読むほうもしんどいだけですが、自虐を自分でちゃかすことで、ユーモアに昇華できます。読者も書き手のゆとりを感じて安心して読めます。
【例文】
ダイエットしようと決めて1ヶ月。おそるおそる体重計に乗ったところ……ガーン、3キロ増えてるじゃん!何コレ!?
この全宇宙において、私は着々とスペースを増やしていると言えるね。領土拡大だね。
・共有認識を拝借する
知識、知恵など、読者の共有認識を借りて書くのも知的好奇心が満たされ、おもしろい文章が作れます。
【例文】
・いつもキラキラ華やかで美しい、憧れの人に思い切って告白した。結果は……惨敗。鼻にも引っ掛けられず、微笑みながら「お友だちでいましょう」だと。
あんなにきれいな女と付き合ったら、きっと金がかかるにちがいない。食事だって豪華なとこに連れて行かなければならない。そうだよ、そうならずに済んでよかった。
アレ、これって……すっぱいぶどう……
すっぱすぎて、泣けるぜ……
とんちユーモアを書くコツ
・文章の構成
おもしろい文章には、巧みな構成立てが重要になってきます。どこから書き始めるのか、どういう順番にするのか、企画をよく練ることが重要です。
・シーンが思い浮かぶように
読者の頭の中にそのシーンが思い浮かばないと、おもしろく思ってもらえません。以前お伝えした、「ありありと想像させる」を意識して、描写してみてください。
・オノマトペを使う
おもしろい話をテンポよく読み進めてもらうために、オノマトペを使うという手もあります。入っていると読者が連想しやすい効果があります。
・比喩を使う
比喩は、読者の理解を進めつつ、おもしろさを表現できる重要な手法です。比喩は、それだけでもおもしろさを出すことが出来ます。
・文末の締めがとても重要
締めをどうするかで、読後感が決まります。ユーモアの切れ味も変わってきます。
ここはよく練って書きましょう。
参考例文を書きましたので、以下に記載しますね。
【参考例文】
その病院は廊下が待合室になっていて、私は外来受付の向かいに腰かけていた。
そこにシャキシャキしたおじいさんがやってきて、少し耳が遠いのか大きな声で「ヤマザキです!」と言った。
看護師さんが出てきて、これまた大きな声で
「ヤマザキさん、今日は胃カメラだから、ごはんは食べて来なかったよね? ごはん食べてこないように、前回言ったよね?」
と確認するとヤマザキさんは、これまた大きな声で「はい! ごはんは食べてません! パンを食べてきました!」
ヤマザキさん……。
では今回のお題に行ってみましょう。
課題17🌼「おもしろかったことを、おもしろく書く」
自分が経験した「おもしろかったこと」を、「おもしろく書いて」ください。
ただ時系列に並べると、面白い話も面白くなくなってしまうので、構成を練りましょう。
これまでにお伝えしてきた手法の数々をうまく取り入れていただき、とんちやユーモアを表現してください。
だいたい200字ほどにまとめてください。はみだしてもOKですが、200字くらいのほうが、スマートにまとめられると思います。
ではでは、投稿をお待ちしていますね。