今日は父の命日でした。
遠いむかしむかしの話ですが、私が小学4年生の頃。
父は単身赴任で、週末だけ帰ってくるという生活でした。
お土産は本か、パズル。毎週楽しみにしていたのですが、その週は見たこともないパズルをくれました。
「これはルービックキューブって言って、こうしてガチャガチャに組み替えたブロックを、色を揃えて元に戻すんだ」
そう言うと父は、ガチャガチャにしたブロックを、くるくる回転させ、色を揃えて戻してみせました。
「すごい! へぇー、やってみる!」
父はまた、揃ったブロックをガチャガチャに組み替えて私に手渡し、
「来週お父さんが帰ってくるまでに元に戻せたら、なんでも欲しいものを買ってあげるよ」
「本当に? なんでもいいの?」
「うん。がんばって挑戦してごらん」
そして月曜になり、父はまた単身赴任先へ戻って行きました。
「よーし、今週中に絶対解いてやる!」
私は意気込んでチャレンジしましたが、なかなか手強く、あとちょっとで揃うところまで行きそうで、全部のブロックがキレイに揃わないのです。
木曜日まで悪戦苦闘した私は、キューブを投げ出し、ふてくされました。
金曜の夜、父から電話がありました。母と話した後、父は私に電話を変わってほしい、と母に言ったようなのですが、すっかりすねていた私は「(電話に)出ない!」と答えました。
それに、明日になったらまた父は帰ってくるのですから、明日降参して、一緒にルービックキューブで遊べばいいや、と思ったのです。
しかしその晩、父は単身赴任先の宿舎で急逝。
もう2度と話すことは叶わなくなってしまいました。
冷たくなって帰ってきた父の横で私は、ルービックキューブを握りしめ、茫然とただただ座っていました。
あの時、私がふてくされず電話に出ていたら……
「帰ってきたら、やり方教えて、お父さん」
「明日は一緒に遊ぼう!」
「お父さん、大好き!」
いくらでも伝えるべきことがあったのに、私はその機会をすねて見過ごしてしまった……数十年たった今も時折胸がチクリと痛みます。
そして学んだことがあります。
伝えるのは大事なこと。
ありがとうでも大好きでも、大切な想いは今、伝えよう。
伝えられるうちに、伝えよう。
……ちなみに今でも私は、ルービックキューブが解けないままです。いつか父の元へ行ったら、解き方を教えてもらおうと思っています。