ケーキ屋さんの信念。想いは良くも悪くも伝わる――。誠意も真心も、持っていないものは伝わりません。

ひとりでも商売繁盛

広告プランナー、集客と販売促進の企画制作プロデューサー兼アートディレクター。株式会社スタジオ・ディライト代表取締役。

全国各地の有名企業から小規模事業まで、500社を超えるクライアントのプロジェクトに参画。広告や店舗の企画制作プロデュースから、ワークショップなど集客に関わる企画で幅広く活動中。
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「ひとつのケーキに、それぞれのドラマがあるんです」

私の事務所に、とある地方で評判のケーキ屋さんから、パンフレットを企画制作してほしいという依頼が入りました。

私の仕事は、いつも現場に行くことと、そこでオーナーの想いを根掘り葉掘り聞くことから始まります。

広告プランナーは、大事なお手紙の代筆をするようなもの。オーナーの想いを同じ目線で聞いて、それをよりよく伝えるのが主要な仕事です。

その日も、新しいパンフレットに掲載する、パティシェ兼オーナーのケーキ作りにかける想いをインタビューすることになっていました。
私はそのケーキ屋さんを訪れ、店舗のバックヤードにある工房で、オーナーからお話を伺っていました。

作業台の上には、フルーツや砂糖菓子で美しく彩られた様々なケーキが並んでいます。

ふと気づくと、パティシェ見習いの若い男性が、作業台からケーキを選び、いくつかを傍らのプラスチックの平たい箱に移していました。

私はオーナーに質問しました。

「あの箱のケーキは配達するんですか?」

するとオーナーから予想外の返事が。

「いやぁ、あれは売り物にならない商品です。スタッフで分けて食べます」

私は驚きました。

よけられているのは、食べるのに全然問題ないような、生クリームの角が、ほーんのちょーっと崩れてるとか、フルーツが若干はみ出て配置されてる程度の、言われなければ気づかないようなものだったからです。

「えっ、コレでボツなんですか? ロスが多くなりませんか?」

私が聞くと、オーナーは少し照れたように笑って、次の話をしてくれました。

「つまらない職人の意地だと笑われるかもしれないですけど、ひとつも手は抜けないんですよ。

自分らにとっては数あるたくさんのケーキですけど、お客さんにとっては、そのひとつが、大事な特別なケーキなんです。

ひとつひとつのケーキの行く先は、お祝いだったり、大事な人へのプレゼントだったり、自分へのご褒美だったり。

そのシーンを思い浮かべたら、ちょっとでも崩れたケーキは渡せない。とっておきの1個を渡したいんですよ。

大手メーカーは流れ作業で作るかもしれない、コストを考えてウチがボツにするようなものも、商品ラインに乗せるかもしれない。

でもお客さんのことを考えたら、流れ作業じゃ出来ない仕事もあって、自分はそれがやりたくて、この店をやってます。

1つのケーキに、それぞれの特別なドラマがあるってことを、ケーキ屋は忘れちゃダメだと思うんですよ」

その言葉を聞いて、私は鳥肌が立つような思いをしました。

――言われてみれば、そんな仕事をするのがベストだけど、その通りだけど、そこまでの想いを乗せて仕事が出来る人は、どれくらいいるのだろう。

『1つのケーキに、それぞれの特別なドラマがあります。』

——パンフレットにはオーナーのその言葉を、かいつまんでメッセージとして載せました。

腕前はもちろんだけど、こういう心意気が、地方にあっても、よそから人が来るほどの人気を得ているのだな、とオーナーの言葉が強く印象に残りました——。

せっかくひとりで商売をやるのなら、自分の姿勢を明確に。
信念を貫くことでお客さんはそのお店のファンになり、信頼を感じるのです。

今一度、ご自分の仕事に対する信念、姿勢を見直されるといいかもしれません。そしてそれは大手に対抗しうる、自分自身の強み、ブランディングとなるのです。

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