割引なし。粗品なし。安売りしなくても開店当日は行列&完売「パン屋さんの手紙」

事例

広告プランナー、集客と販売促進のコンサルタント。
株式会社スタジオ・ディライト代表取締役。
広告プランナーとして全国各地で活動。広告の企画制作プロデュース、集客・販売促進のコンサルタント業務に従事。
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※許可を頂いて掲載していますが、オーナーの意向により店名・お名前は仮名とします。

今回の話は、小さな町の町はずれに新しくオープンする個人経営のベーカリー。

私のウェブサイトを見て、ぜひ新聞折込のオープンチラシを一緒に考えて制作してほしいので一度お会いしたいと、大変誠実なメールが届きました。

依頼者はパン職人の沢田さん。
私はオープン前のお店を訪れることにしました。

カランコロン、とドアベルを鳴らして店内に入ると、明るいカントリー調のインテリア。新しい木の香りに交じって、パンの焼けるおいしい幸せな香りがふんわり漂っています。

「ちょうど試作が焼きあがったところなんですよ。ひらまりさん、これ食べてみてください、これも、これも!」

店主の沢田さんは、満面の笑顔で次々とパンを並べてくれました。

出されたパンは全部おいしく頂きました。外側がカリッとしているのに、中はふわふわ。いろんな味のバリエーションもあって、もしお客さんだったらどれを選ぶか迷いそう。

特にクロワッサンが自信があるとのことだったのですが、これがもうサクサクでふわふわで本当においしくて。
サンプル試食なのに、勧められるまま、たくさん頂いてしまいました。

——これは、ちゃんと伝えれば絶対お客さんはリピーターになる。

そう確信して、依頼を引き受けることを快諾しました。
(たくさん食べさせてもらったパンにつられたわけではありませんよ)

店内にある小さなカフェスペースで、沢田さんと打ち合わせ。
商品展開の詳しいお話、お店をオープンされるまでの経緯などを数時間に渡って詳しくヒアリングしました。

「そんなことまで聞くんですか(笑)」

と沢田さんは、いろんな質問を投げかける私に苦笑されていました。
でも、

「こんな町はずれですし、人が来てくれるかどうか……」
「オープン記念で、来て買ってくださった方先着何名とか、花の苗をプレゼントしようかと思ってるんですけど、効果があるかどうか……」
「それとも次回使える300円割引券をつけたほうがいいのか……」

と沢田さんは顔を曇らせましたが、その時私には、最適なアプローチの方法が思い浮かんでいました。

「沢田さん、新聞折込のチラシには、お客さんへのお手紙を書きましょう」
「手紙ですか?」
「はい、手紙です。想いをこめた、沢田さんの真心が伝わる手紙。オマケの花の苗も、300円割引券もいりません。ストレートに想いを伝えるお手紙で行きましょう」
「うーん、それで大丈夫かなぁ、でもひらまりさんが言うなら……分かりました、書いてみます」

それから数日後、沢田さんからのお手紙が届きました。それをもとに、前回のヒアリングでお伺いした内容から、これを足して、これを引いて、を繰り返し、何度もやりとりして書き直してもらいました。

そして無事、沢田さんのお手紙は完成。

「でも、こんな私の手紙で、人が来るんでしょうか……」
「大丈夫です。沢田さんの想いを汲み取ってくれる人はたくさんいますよ」

私の方は平行して、チラシに使う紙を選びました。洗いざらしたような飾り気のない、でも手触りを感じられる、パン屋さんのイメージに合うようなザラリとした紙。できれば、クラフト紙のような色合いで……。

そのチラシを手に取って読んだ時、おいしそうなパンのイメージを持ってもらえたら、と思ったのです。

印刷会社でサンプルを探し回ったところ、ちょうどよい風合いの紙が見つかりました。

その紙に沢田さんの手紙を載せ、印刷が上がってきたチラシを見た私は、これは伝わる、と確信しました。

そして開店3日前、新聞折込当日。

割引もなし、粗品なし、下に必要最低限の住所と地図を入れて、それ以外の誌面を全部便箋にした、店主からお客さんへの手紙が折り込まれました。

「はじめまして、ベーカリーさわだの店主・沢田です」

から始まるお手紙は、こんな風に続きました。

ーーー

小さい頃、家の近くにパン工場があって、川べりに寝転んでその香りをかいでいるだけで幸せな気持ちになったこと。

それは大人になっても、ずっと心に残っていたこと。

パンが大好きで大好きでベーカリーに勤めたこと。

パンを選んで喜んでくれるお客さんを見て、一生の仕事にしようと決めたこと。

思い切ってパリまで修行に行ったこと。

最初は言葉も分からないし、親方には叱られるし、ものすごく苦労したけど、帰国する時に親方は泣いて、日本でもがんばれよ、と言ってくれたこと。

そして、ついにやっと念願の、小さいけど自分の店が持てたこと。

ただ喜んでほしくて一生懸命パンを焼きます。

ーーー

オープン当日。

開店祝いのお花を持った私、ベーカリーさわだに行くと、お店の外まで長蛇の列。その後閉店前に完売したそうです。

お花だけ置いていこうと、お客さんでいっぱいの店内に入ると、パンを並べた鉄板を持った沢田さんが、満面の笑顔でペコリと頭を下げられました。

想いは、割引や粗品を凌駕するのです。
町はずれでも、人が望んでやって来るのです。
そして割引や粗品など、モノでつったお客さんではないので、商品力が強ければ、リピーターになる可能性は高いのです。

想いを伝えることは、広告の重要なポイント。

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